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[[Uchiyama Gudo|Uchiyama Gudō]] (1908). 「伊藤中將姦通觀」 [A View on Lieutenant General Itō's Adultery], 『世界婦人』 21 (1 January 1908): 7. ([[UG08ITO-T|English translation here]].)  
[[Uchiyama Gudo|Uchiyama Gudō]] (内山愚童) (1908). 「伊藤中將姦通觀」 [A View on Lieutenant General Itō's Adultery], 『世界婦人』 21 (1 January 1908): 7. ([[UG08ITO-T|English translation here]].)  


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Uchiyama Gudō (内山愚童) (1908). 「伊藤中將姦通觀」 [A View on Lieutenant General Itō's Adultery], 『世界婦人』 21 (1 January 1908): 7. (English translation here.)


伊藤中將姦通觀

内山愚童

福田女子足下はや今年も十五日を余すのみ と云ふ多忙の時とはなりました、二十號の 世界婦人、只今拜見、足下が天の使命を奉 じて暗黒なる婦人界に光明を與えらるゝ行 動には、僕等赫顔の至りであります

聞けば年末に一月號を出さるゝとのこと 定めて目下の問題たる、中將姦通事件も、 諸先生の快刀亂麻の新解釋が、紙上に於て 讀者に見ゆることゝ存じます

いかゞですか、僕の姦通観をも紙面の余 白に載せては下さらぬか、敢て是非にとも 申さぬ、とるべき處あらば載せられたし

僕の信仰を卒直に申せば、倫理の辭書か ら孝を去り忠を捨て其上貞と云ふ文字をと り捨てゝ、世は初めて天國を見ると云ふの でありますから、今回の姦通事件も世の資 本家新聞で中將を一人いじめにするのと、 一寸毛色が違って居る

コウ前置きをして、極簡單に一人々々に 短評を試みて、世の読者と云ふ歴々に問ふ ことにしやう

可愛想なる陽一、信仰なき者は哀れなる ものかな、私有制度の迷網を切り捨つるこ とが出来ないで、己れの妻であるとの迷信 が、こんどの事件を引き起した者であるが よし裁判の結果、陽一の勝利となって見た 處で、陽一其者に何程の利益がある、お原 が中將に賣った愛情を取返すことは、よも や出来はせぬであらう、悲しいかな陽一、 汝は今に於て妻は私の所有であると云ふ迷 信を捨てゝ、愛情の繼續する限りに於て、 夫婦たるべし、夫婦の一方何れにせよ、愛 情の他に移りし時は、これ自然の離別と思 ふて、此間に人意の私心を用ゆべきでない と云ふ、信仰にいるべし、茲に於て女は初 て苦なる此世界より脫れて天國の人となる べし、もし然らざれば永劫の墮獄は免れず と知られよ

現社會に捕はれたるお原、今回の姦通事 件に於て問題の中心たるお原よ、汝はさき に中將に性交を申込まれた當時、何故に陽 一と離婚して、しかして後に應せざるや、 もし汝が一週間の猶豫を中將に願いしと云 ふ、其一週間に此考が發つたならば、今回 の事件は起らなかった者を、さりとは云へ 汝も亦時世の子なり、何人も今日世に於て 虛榮と生活の奴隷でない者はない、汝が中 將の妻となる見込のない以上は、陽一と離 婚してまでも中將と愛を共にせんとの覺悟 は出来まし、之を思ふにつけ現社會の私有 制度は呪ふべきものではないか、汝をして 今日の運命に落したる、此私有制度を轉復 する為に、汝が終身の全力を注げよ、これ 汝をして今日の穴に落せし仇を打つ者なり

愚なる中將義五郎よ、僕は汝が今回の行 為を罪悪なりとして悪む者ではない、併し 網を切り破ることが出来ないで居る。愚な る者たるを免れない、今回の事件などは、 汝が同役間には、事珍しきことではない、 金銭の自由なる為に堕落する者と、餓ゆる が為に堕落する者とを以て、満ちて居る今 日の社會を、薄べらな黒幕を切って落せば 皆それである、然るを千載一遇の仇にでも 遇つたやうに、汝を攻撃する世の新聞記者 なる者の馬鹿さ加減は吹出さずには居れぬ それと同時に、こんなつまらぬ社會制度に 縛られて、休職までさせられる汝も亦愚な ことではないか、僕は思ふ、汝が今回の事 件は、天が汝をしてこの馬鹿氣たる社會を 破壊すべく命ぜられたのではありまいかと 煩悶することを止めて、沈思黙考せよ、煙 の如き名譽と、泡の如き利益とを争ひつゝ ある今の社會は、早晩滅亡の運命を有して 居るではないか、名譽何者ぞ、財産何者ぞ そを争ふ御主人公なる、自身それ何者ぞ、 徒に煩悶するを止めよ、煩悶するを止めて 晩餐後杖を引いて、谷中の墓地を逍遙し見 よ、玆に明なる福音に接せん

かくして汝は新光明を得て、剣を持って 得たる今日の地位よりも、之に倍するの榮 譽に奥らんかな、煩悶する勿れ、進んで汝 が天の使命を全ふせよ

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